京都大学医学部附属病院 循環器内科

不整脈電気生理・疾患iPSグループ

当研究室の概要

当グループは、不整脈疾患や心筋症の遺伝的背景の解明を目指し、臨床・基礎研究に取り組んでいます。家族性心疾患の遺伝子解析、表現型・遺伝型解析、家系解析、発症メカニズムの解明をすすめています。特に、疾患モデル、創薬開発のツールとして疾患特異的iPS細胞研究に注力して進めており、遺伝性不整脈・心筋症を対象とした患者由来分化心筋の解析を行っています。また、原因遺伝子不明な症例に関しては全ゲノム解析を用いて新規原因遺伝子変異の同定をすすめています。

研究内容

家族性不整脈の遺伝子診断・不整脈疾患の分子病態の解明

当院を含む国内多施設から症例を集めており(当研究室出身の滋賀医科大学呼吸循環器内科、堀江稔教授と共同研究)、対象疾患はQT延長・短縮症候群、ブルガダ症候群、家族性徐脈(洞不全症候群、房室ブロック)、家族性心房細動、アンダーセン症候群、家族性WPW症候群、不整脈源性右室心筋症、カテコラミン誘発性多形性心室頻拍、ラミン関連心筋症(DCM+徐脈)など様々な家族性不整脈を解析しています。

同定された変異遺伝子を持つ変異型イオンチャネル蛋白を培養細胞に発現させ、その機能をパッチクランプ法で解析することにより、チャネル機能と疾患の表現型の関連を理解しようと努めています。

また、培養細胞での機能解析にとどまらず、モデル動物を樹立して、心電図や血行動態の取得、EPS解析、不整脈出現の成立機序やそれをregulateする因子の同定、治療法の確立を進めております。モデル動物以外にも、各種チャネル蛋白の分子間相互作用や、コンピューターシュミレーションを用いた不整脈の検証など、いろいろな側面から不整脈疾患に迫りたいと考えています。

新たな原因遺伝子の探索

家族性不整脈疾患において新たな原因遺伝子の探索・発見は、疾患の病態解明、治療法開発の大きな発展につながります。なかでも、ブルガダ症候群は働き盛りの中年男性において突然死を来たし、植込み型除細動器(ICD)以外に有効な治療法がない社会的にも非常に重要な疾患です。現在遺伝子異常(Naチャネル)が見つかるのは15%のみであり、まだ原因のほとんどは不明です。当研究室で集積してきた症例を用いて、イオンチャネル関連遺伝子のスクリーニングや連鎖解析を用いたポジショナルクローニングを行い、新たな原因遺伝子探索を目指しております。

疾患特異的ヒトiPS細胞由来心筋細胞を用いた不整脈疾患の病態解明

我々の研究対象である心臓は、患者から採取することは困難であり、ヒトの心筋細胞を用いた研究はほぼ不可能でした。そのため、現在までは培養細胞やモデル動物(マウス、ラット、イヌなど)を用いた研究が進められてきました。しかし、vitroとvivo、また異なる種間では生理的メカニズムが異なる場合が多く、培養細胞やモデル動物と実際のヒト心筋の間にはmissing linkが存在します(下図)。ヒトiPS細胞由来心筋細胞を用いることにより、患者の心筋(疾患特異的ヒトiPS細胞由来心筋細胞)を作り出すことができ、これを解析することにより、missing linkを解明することができると考えています。

iPS細胞を用いることにより、実際の心筋細胞(iPS細胞由来)でより詳しい解析が可能になると期待されます。また、既知の遺伝子異常を認めない症例でも、iPS細胞由来心筋細胞の解析により、新たな原因遺伝子を発見する契機となります。
薬の薬効の検討—不整脈疾患患者のiPS細胞由来心筋細胞を用いることにより、抗不整脈薬の薬効評価、薬の催不整脈作用評価にも応用が期待されます。
ヒトiPS細胞由来心筋細胞を用いた研究は、京都大学iPS細胞研究センター、吉田善紀先生と共同研究を行っています。

最後に

遺伝的素因の疑われる不整脈患者さんがおられましたら、是非ともご紹介頂ければ幸いです。学問的観点のみならず遺伝子解析結果を患者さんの診療へ還元できればと考えております。また、当グループにご興味のある方も、以下までご連絡ください。

連絡先:
京都大学大学院医学研究科
地域医療システム学・循環器内科学
特定講師 牧山 武
e-mail: makiyama[a]kuhp.kyoto-u.ac.jp
※[a]を@に置き換えてください

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