京都大学循環器内科の前期・後期研修医教育の目指すところは、循環器診療についての幅広い知識を有し、基本的手技を修得し、かつ患者に共感を持つことのできる循環器内科医を育てることにあります。勤務医が不足する中で、若手医師ができるだけ早い時期に循環器内科医として自立することは大変重要です。平成 30年度からは新専門医制度が導入されていますが、我々は循環器内科以外の症例経験が求められる中でも、患者に対して医師としての責任を負う循環器内科医としての研修を可能な限り提供したいと思います。実際、京都大学内科専門医研修プログラムでは他の内科領域のローテーション期間がかなり短縮されており、その実現が可能となっています。具体的には、専門修練医には3 年間の研修期間中に、心臓超音波検査、心臓カテーテル検査、冠動脈および末梢血管インターベンション治療の基本、ペースメーカー植え込みが習得できるようなプログラムを作成しております。実際に、このプログラムを終了した卒後 6 年目の医師は冠動脈インターベンションに習熟し、夜間の緊急インターベンション治療を施行しています。また専門修練医は大動脈瘤ステントグラフト治療、心房細動のカテーテル・アブレーション、経カテーテル大動脈弁留置術(TAVI)、心房中隔欠損閉鎖術など一般市中病院では研修困難な先進医療にも参画しています。
京都大学内科専門医研修プログラムでの循環器内科専門修練医の仕組みとしては京都大学病院後期研修に引き続き連携先である関係病院において循環器内科の専門研修を継続することも可能ですし、途中で関係病院京大病院に戻ることも可能です。京都大学循環器内科の関係病院は症例数の多い公的病院が多く、充実した研修が可能です。また、その後に大学院を受験して、基礎・臨床研究医として研究を続け、さらに留学される方も多数おられます。
京都大学循環器内科で後期研修される皆様には、将来的に関係病院の多数の先生が御参加されている「同門会」に入会いただきますが、これはいわゆる「医局」ではありません。力を合わせて診療、研究を進めて行こうという仲間の集まりです。赴任についてもいわゆる医局人事というものはなく、それぞれの医師の希望をお伺いしながら相談して決めて行きます。
若手医師にはバランスのとれた臨床医であるだけではなく、将来、国際的な情報発信ができる研究者として成長するための基礎を身につけていただきたいと強く願っています。そのために必要な動機付け、臨床研究企画や統計解析の基礎についての指導、基礎研究者との交流など、多くの教育機会を提供いたします。一流海外誌に多くの論文を掲載している臨床研究者や基礎研究者と身近に接することができるというのも京都大学循環器内科での研修の大きな魅力です。また、将来的に大学院に進まれた際には、臨床教室の利点を最大限に生かした研究を実践し、循環器疾患とその合併症の発症・進展機構の解明や、新規治療法の開発に携わって頂きたいと考えています。さらに、国内外の大学や研究室との共同研究を積極的に展開し、最先端の情報を共有してグローバルな視野をもったPhysician Scientistとなって頂くことを期待します。
現在の京都大学循環器内科には若手、中堅医師が多く集っておりますが、皆、高いモチベーションを持ち、お互いに切磋琢磨して研修しております。診療の現場を担い、かつ臨床研究に意欲を示す、彼らの成長ぶりには指導する側からみても目を見張るものがあります。
京都大学循環器内科の研修では論文執筆を強く指導していますが、研修医による学会発表数は非常に多く、さらに研修医による論文も多く採択されています。京都大学循環器内科は多くの循環器多施設臨床研究の中核として活動しておりますが、ここでも若手医師がデータ解析に従事し、論文執筆を行う体制が構築されています。
我々は今後の日本の循環器医療の向上に大きな貢献をする決意です。そのためには多くの若い力の結集が不可欠です。一人でも多くの方に京都大学循環器内科の門を叩いていただくことを願っております。
京都大学医学部附属病院循環器内科
診療科長 教授 尾野 亘