京都大学医学部附属病院 循環器内科

大学院入学を考えておられる先生へ

循環器研究のめざすところ

臨床医が研究に従事する意義・理由は何でしょうか? これについては、ノーベル賞受賞者のゴールドシュタイン博士がJ Clin Invest 78; 848-854:1986の論文に書いておられるように、 “一見治療法の無いと思われるような疾患に遭遇しても、何を考え、どうやって調べ、それをどのように解決・証明していくのか? という一連の思考過程と検証方法を学んでおれば、それに対する解決策を見出すことが出来るようになる”からです。

誰もが経験することですが、一人前の臨床医になればなるほど、経験を積めば積むほどに、現実の臨床での限界に直面することになります。

こうした臨床の限界にぶつかった際に、例えば“心不全や動脈硬化の病態はどこまで解明されていて何がわかっていないのか?” “新しい治療法を考案するには何が必要で、何をすればよいのか?”をじっくりと、学び、考える一連の過程は非常に重要です。

また、医学の進歩は非常にスピードを増しています。学生時代に学んだことだけでは診療はできませんし、極端な話として、去年の知識はもう通用しないかもしれません。また日常臨床で使用している薬剤やガイドラインはすべて、これまでの多くの人たちの研究によって確立されたものです。

同時に、研究過程の中で、多くの専門家の指導を受け、また目標を同じくする同志と出会って力を合わせて疾患の研究を行うことは、自分自身の生命科学・医学への視野を広げることにもつながります。

ひとつの疾患や病態に照準をしぼった医学研究に、大学院などのある一定期間従事することによって、その後再び臨床の現場に帰ってからの自分自身の疾患への取り組み方や考え方が大きく進歩していることに気づくでしょう。そして、それが最終的には臨床医としてのさらなるスキルアップにつながるはずです。

長い医師人生の中で医学研究に没頭する期間を設けることをおすすめします。

京都大学医学部附属病院循環器内科
教授 尾野 亘

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